横浜と大阪のIRは街づくりの方針が違う。夢洲はアクセスが悪くても問題ない

IR(統合型リゾート)

IRのイメージ図

少し前に下の様な質問を頂いた。

私の考え
>>>確かにアクセスは悪いですし、それによるデメリット(客が少なくなる)もそのとおりだと思います。一方、そのような場所だからこそあれだけ広大な更地があったわけで、ゼロから非日常空間を創り出すには最適かと。ただ木曽さんは専門家だけあって指摘は的確ですので、受け止めるべきは受け止める姿勢が大切かと考えます。

 

筆者はあまりかかわっていないので分からないが、大阪のIRを支持する人々とカジノやIRの専門家である木曽氏がぶつかっているらしい。

で、「夢洲のIRはアクセスが悪く不利だ」などと指摘を受けているとのこと。

今回はそのIRのアクセスについて考えてみる。

確かに夢洲のIRは”アクセスが悪い”

上が大阪府と市が誘致を表明している候補地である夢洲(ゆめしま)だ。「ゆめしま」と読む通り島となっており、ゴミなどを埋め立てて作られた。

今は鉄道がとおっておらず、地下鉄中央線(緑色)が万博のある2025年までに延伸することが決定している。また、IR誘致が決まれば、JRゆめ咲線が延伸し、梅田から一本で繋がることになる。

所要時間でいえば、大阪駅~夢洲駅(JR)、本町駅~夢洲駅(メトロ)でそれぞれ約20分弱だと予測される。

一方、関東で有力候補の横浜は「山下埠頭」に建設される予定だ。

 

横浜IRの候補地である山下埠頭

横浜駅から地下鉄で10分であり、羽田空港からも首都高速で一本だ。都心や空港からの距離を考えれば、夢洲のIRよりアクセスは良いと言えるだろう。

 

大阪と横浜ではIRの活用方法が違っている

しかし、大阪IR(夢洲)と横浜IR(山下埠頭)では、そもそもまちづくりの方針が違う。

ザックリいうなら・・

大阪:大阪都心の外に、新しい国際観光拠点を作る(ゼロからイチを創る)

横浜:横浜の街の中に、IRを作る(イチをさらに増やす)

 

大阪の目指すIRを軸にした新しい拠点を作るには、広大な用地が必要だ。

で、大阪IRが掲げるほど大きな用地を確保できる場所は都心付近には残っていない。

390Haという広大な夢洲のような土地が都心にあれば、既にビルか商業施設が立ち並んでいるはずだ。

※参考。甲子園は3.85 ヘクタール(ha)です。デカすぎる(笑)

 

咲州庁舎から見た夢洲

もちろん大阪の負の遺産を活用するという政治的な意向があるにせよ、新しい観光拠点を作るには広大な用地が必要であり、そんな場所があるのはベイエリアや郊外しかないのだ。

つまり、現時点でアクセスが悪いのは当然である。

 

また、これまで人がいなかった場所に新しく拠点を作るのだから、上手くいかない時のリスクはある。そこは事業者にとっても及び腰になる点なのではないかと推測している。

しかも一度失敗した”空き地”だから、なおさらだ。

 

しかし、万博に成功し素晴らしいIRを作り上げ、大阪得意のコンテンツ力を組み合わせて成功できれば、負の遺産が宝の島になる。

事業者としても比較的安い賃料で広大な敷地を利用でき、巨大市場の日本において、アジアのフラッグシップIRを作ることができる。また大阪府市もIRに好意的なので、PR活動も手助けしてくれるだろう。

要は、大阪府市にとっても事業者にとっても、夢洲はハイリスクハイリターンなのである(笑)

 

その他、関西企業もIRに対しては前のめりだ。近鉄グループが老朽化した海遊館の移転を検討したり、奈良への新型直通列車を製作したり(この執念はすごい)、京阪が九条に延伸したり、メトロが巨大のっぽビルを発表するなど、鉄道会社を中心に夢洲開発に全力でコミットしている。

もちろん将来の収益源確保のためではあるのだが、この力の入れようは単に”稼ぎたい”だけではない気がする。50年間の大阪経済の地盤沈下でストレスがたまりきっており、何とかしたいのだ(笑)

 

話は逸れたが、一方の横浜は都心近くで空港からもアクセスが良い場所に作る。新しい拠点ではあるが、あくまで横浜の持つ機能の一つとして活用される。

首都圏は人口が4000万人近くいて市場も大きく、空港からのインバウンドも狙えることから失敗リスクは小さく、コンスタントにしっかり稼げるだろう。

 

横浜と大阪のIR(イメージ図)

ササっと概念図を作ってみた。よく考えると大阪を左にすべきだったと後悔しているが、何となくのイメージはつかめるのではないかと思う。

横浜は街の一部としてIRを誘致し、大阪は新しい街(拠点)を創り出すことを目指してIRを誘致しているのだ。

以上です。

コメント

  1. より:

    横浜IRは、顧客に占める割合として日本国民が多くなることが予想されます。もちろんそれは事業者の視点で見ると魅力的ですが、市民生活や国益という意味では懸念が大きいと思います。
    その点、大阪は立地が悪い分、市民生活への影響も少ないし、横浜と違って外国人から観光地としての人気も高いので国益の点からも優れています。
    ましてや、横浜は市長が事前にしっかり説明し民意を得ることなしに騙し討ちのような形を取ったことでこれから予断を許さない状況になるのでは。

  2. より:

    IRについて、まず最初に思うのはなぜ作りさえすれば必ず経済効果を生むと考えているのかということ。ネットで軽く調べた限りではIRやカジノ関連の人の意見で日本のIRに肯定的な意見は少ない。IRが必ず成功するとは思ってはいけない。特に1地区1ライセンスは最悪手だと思う。なぜこんな制度にしたのか。1企業で1兆円規模という非常に大規模な事業の場合、失敗した場合のつぶしが非常に効き辛い。また、1企業だけではバリエーションを持たせるにも限度があり、客が飽きやすい。どこかで見た記事の受け売りだけど本当にその通りだと思う。そしてそんな1兆円規模のIRなんて国内に3つもいらない。一つ一つを小規模にして東京、横浜あたりに3つ作ればいいんじゃないか? 失敗した時のリスクを考えても、その負担に耐えうるのは東京くらいだろうし。大阪には正直来て欲しくない。

  3. より:

    とりあえず大阪のIRはもう既にある僻地に作る予定ですから、別に失敗してもそれは参入企業が損害を被るだけであって自治体や府民には痛くも痒くもありません。むしろ横浜はちょっとそうはいかないんじゃないでしょうかね。