高層ビルが林立する香港(筆者撮影)
ちょっと海外のお話。
少し前に香港旅行に行った。現地でふと「あれ?香港って何か大阪と似てる(笑)」と思った。漂う雑多でエネルギッシュでアジア的なパッション。
今後、共産党の政治的圧力が強くなり、香港は恐らく”経済自由都市”でなくなる。その代替都市は大阪が狙い目では?と密かに思ってる pic.twitter.com/hGCksCbi6n
— 大阪の未来構想 (@osaka2theworld) August 22, 2019
(続き1)大阪と香港は何か似てるのだ。少なくともいい子ちゃんの東京とは違う。
今後、政治改革が進んで、道州制や一国二制度が大阪に導入できれば、規制緩和と外資企業誘致、税制優遇を振り回してこのポジションを取りに行くのはオモロイ。
(続き2)香港の周辺を見てみる。台湾は政治的リスクがある。シンガポールは良いが少し遠い。ソウルも微妙。東京はアリだが、キレイすぎるしルールに厳しい。そこで大阪。都市規模はあるし、地下は安いし、アジア的要素があるし、東京より自由やし、何よりあらゆる面で安心安全の日本にある。
旧イギリス領で1997年に中国へ返還された香港は、経済的に自由な都市として発展を続け、東アジア随一の金融センターとなっている。
その高い経済発展状況を反映してか、一人当たりのGDP約490万円は、日本の409万円より80万円も高くなっている(2017年度、1ドル=106円)。
香港がここまで発展してこられた理由は、一国二制度という大陸本土とは違う政治体制を保証する制度により、経済的・政治的な自由が守られているからであった。
しかし、今年6月の逃亡犯条例の大幅改正案など、その一国二制度の根幹を揺るがす中国本土の動きが出てきている。
多数の香港市民を巻き込んだデモにより、とりあえず法案は凍結されたものの、今後どうなるかは分からない。
中国共産党は長期的に香港の力を削いでいくだろう
香港独立から間もない頃はまだ中国大陸は経済発展途上で、香港には圧倒的な経済力があった。
しかし、当時とは状況が変わってきて、中国では経済首都である上海や中国版シリコンバレーの深センなど、有力な経済都市が育ってきた。
実際、深センの成長はすさまじく、2017年には深センのGDP(約38兆円)香港(約36兆円)を抜いた。
香港は以前ほど経済的な力はなく、中国共産党にとってもその重要性は薄れてきている。
最近では、中国政府が深センを中国金融のモデル都市として発展させようとしている。
また、伝統的に中国(漢民族国家)は一国二制度のような自治を認める政治体制を好まず、自分たちの政治体制の直接の支配下に置こうとする。
要は中国(共産党)は、「自治は認めるからその代わり税金はしっかり納めてね」という寛容な政治はできず、新疆ウイグル自治区の弾圧に見られるように、「中国政府に従え」という姿勢で自治を潰そうとする。
香港の相対的な経済力の低下や中国共産党の政治体制を考えれば、今のような自由な経済体制が今後もずっと認められ続ける可能性は低い。
中長期的には香港の自由主義的な経済は潰されていく可能性が高い。.
代替都市はどこになるだろうか?
経済自由都市である香港が弱まってしまえば、自由でビジネスがしやすい環境を好むグローバル企業やグローバル資本はどの都市に流れていくだろうか?
一つ挙げられるのは同じ経済自由都市であるシンガポールである。
今後、自由な経済活動や政治的環境が認められなくなるにつれて、シンガポールに拠点を移す企業も増えてくるかもしれない。
他にも台湾の首都・台北も可能性としてはある。しかし、そもそも台湾は各国と正式な外交はなく、さらに中国共産党からの政治的圧力が強まる可能性があり、政治リスクの点で懸念がある。
韓国の首都であるソウルも例として考えられるが、決め手に欠けているなと思う。
あとは東京が挙げられる。
確かに経済規模は十分あるし、金融機関の本社機能が集まるなど、日本の金融セクターではある。
その他には、近隣のフィリピンやマレーシア、タイのバンコクなど東南アジアでも候補地は多数あるだろう。
商業都市・大阪はよいポジションにいると思う
水都にふさわしい大阪・中之島のビル群
しかし、経済自由都市という歴史を考えると、日本の中においては、東京よりも大阪の方に分がありそうだ。
筆者は香港に旅行に行ったことがあるのだが、香港の街を歩いていて「なんか大阪と似ている」と感じることが多々あった。
上手く説明はできないのだが、このアジア的な雑多な雰囲気やエネルギッシュな感じが大阪っぽいなあと思った。
まずその都市が持つ雰囲気や人の性質という点で共通性があると思う。
世界の金融市場で最先端を突っ走っていた大坂・堂島米市場
引用:国立国会図書館デジタルコレクション(浪花名所図会 堂じま米あきない)
因みに、世界で初めて先物市場を生んだ町も江戸時代の大坂(大阪)である。
この事実は日本では教科書にサラッと書いてあるレベルのことだが、むしろ世界では評価されており、金融の歴史では必須の事柄だそうだ。
東京は家康の時代から国(官)主導で作られた町であり、日本各地から本社機能が集まってきた現代でも、その本質は政治行政都市である。
どこかの記事で書いていた内容だが、東京は「許可されていないことはやってはいけない街」、大阪は「禁止されてないことは何をやってもよい街」だと聞いたことがある。
これはまさに政治都市と経済都市の思考回路の違いを表したものであり、東京は法律やルールを作る街であるが故にそれに縛られてしまう。
逆に大阪は商人の街として発展し、成功するためにはできることは何でもやらなければならない。ルールや法律を順守するより、そもそも無視したり、その構造上の欠点を指摘してルール自体を変えてやろうという人が多い。
大阪の本質は経済自由都市であり、規制やルールに縛られることを嫌う。
この都市のあり方というか構造的な部分が、香港と共通していると思う。
もちろん大阪が香港のポジションになるには、国全体での大胆な制度改革、つまり道州制や一国二制度など地方の裁量を大きく増やす改革が必要不可欠だ。
今後大阪では都構想の是非を決める住民投票が20年の秋冬頃に実施され、都市全体のあり方が議論されていく。
そこでの改革の是非が、将来的な道州制・一国二制度につながっていくだろう。
20、30年後に大阪が日本において香港的ポジションに立っていたとすれば、大変面白い。
どうなっているだろうか?
【追記】比較的割安な大阪に移住する香港人
中国返還の1997年から少しずつ中国化が進んでいる香港の空気に敏感な市民は、少しずつ他の都市に逃げつつある。
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