結局、大阪都構想とは何なのか(とある大阪人の主張)

開発が進む梅田。2024年には北側(うめきた)に巨大な森林公園が出現します

筆者は今現在大阪に住んでいる一人の大阪人。

巷で大阪都構想の是非についてあれこれ言われていますが、正直分からない人が多いと思います。

今回は大阪維新の会が提案している「大阪都構想」という大都市制度について、分かりやすく説明していきます。

 

大阪都構想は府と市の広域行政を一つにまとめる制度

あっちこっちでいろいろ言われる都構想だが、一言でまとめるなら大阪府と大阪市の広域行政を一つにまとめる制度のこと。

広域行政とは、その名の通り広いエリアで考える必要がある行政のことで、例えば観光戦略や水道事業などが挙げられる。

外国からやってくる観光客だって、大阪市内だけを移動するわけではない。関空を使うし、日帰りで京都に行くかもしれない。大阪府全体で観光客の動きを捉え、例えばWi-Fiやキャッシュレス決済を導入することが大切だ。※なお観光については、既に府市一体の「大阪観光局」が設立されている。

水道事業はバラバラでやるよりも大阪府全体で管理した方がスケールメリットが出て無駄を削減して効率よく運営できる。

 

大阪市はなくなるのか?

大阪都構想では、大阪市が持つ広域行政の権限を、大阪市に移管し、大阪市を特別区に再編することが想定されている。

結局何が言いたいかというと、大阪都構想が実現すれば、大阪市という自治体は無くなるということだ。

維新側は”大阪市が無くなる”ことは印象上あまり好ましくないため、直接的な表現は避けているが、大阪市が無くなって特別区として再編されることは事実だ。

 

特別区になっても日常生活は特に変化がない

都構想に反対する人たちからは、大阪都構想が実現されると「敬老パスが値上がりする」「税金が高くなる」といった主張が散見されるが、実際はそうではない。

大阪市から一部の権限と財源は大阪府に移されるが、基礎行政(保育や福祉など身近な住民サービス)の財源は維持されるため、何か生活が大きく変わるということはない。

 

大阪市長と府知事をどちらも務めた橋下氏は、こういった不安をあおるデマによって住民投票直前で票が一部反対派に流れたと言っていた。

同じ事を繰り返すが、大阪都構想で大阪市が特別区になっても日ごろ受ける住民サービスには変化がないのだ。

 

東京を中心とするマスコミと維新以外の政党が団子になって反維新になるみっともなさ

在阪のマスコミ(主に地上波)は偏った報道をすると両陣営のサポーターからクレームが来ることもあり、比較的中立な報道をしようと心掛けている。

一方、特に東京にあるキー局の報道は大きく異なる。まあ観てもらえば分かるだろうが、中立を装いつつも反大阪維新の報道を展開している。

 

2019年春の統一地方選挙は、特に大阪においては天下分け目の戦いになる。

戦後、日本の構造は東京(霞が関、永田町)を中心として秩序が作られてきた。現在大阪は政令指定都市に指定されているが、その制度は中央政府によって作られた。

今回、大阪はその都市制度が抱える問題点を指摘し、自らの力で制度変更しようとしているのだ。中央の霞が関で働く役人にとっては、正直、気にくわない。

そういう中央(東京)の意向を反映した結果が、現在在京メディアで流されている放送である。

 

また、都構想が実現すると、大阪市議会は解散される。市議会議員にとってそれはつまり”失業”を意味する。高い議員報酬を失いたくないため、他の会派の議員は必至で抵抗するのだ。

さらに大阪市議会は巨大な予算を握っている。平成31年度当初予算で3.5兆円である。ちなみに大阪府の予算は5.5兆円程度であることを考えても、いかに巨大な予算かということが分かるだろう。

既存の政党にとって、その自分たちの好きに決められる予算を失いたくない。そこに維新が切り込んできたものだから、維新以外の政党は団子になって必死に抵抗しているのだ。

 

大阪都構想で実は得するのは大阪市域だ

実はというか一番大事なのはここなのだ。

反対派は、大阪市の予算が大阪府に吸い取られて大阪市が貧乏になるといった主張をするが、先ほども見た通り、基礎行政の財源は変わらないので、そのようなことはない。

さらに言えば、大阪都構想で大阪府が全体の方向性を描けるようになれば、一番得をするのは大阪市域の人々なのだ。

 

それは合理的に考えれば分かることだ。大阪全体の設計図を描くとき、大阪の中心部を抜いて考えることは難しい。

これからIRと万博という巨大プロジェクトが目白押しの夢洲も、インバウンドで外国人がごった返す難波も、グランフロントの開業で人の流れが変わった梅田も(さらに2024年にはうめきたに巨大な森ができる)、全て大阪市内(順に大阪市此花区、中央区、北区)にある。

2025年開催の大阪・関西万博(変なネーミングだと思う)は府と市が一体となって誘致を進めた。これには府と市の協力が不可欠である。

それは大阪市内の土地開発について、府は指導できる権限がない一方で、万博の誘致といった巨大プロジェクトは政治力がある大阪府(知事)が中心となる。

2005年にオリンピックを誘致したとき、府と市は利害の対立から連携が取れず、市主導で誘致活動を行った結果、105票のうち6票しか取れなかった。

巨大プロジェクトを進めるには、大阪市は小さすぎるのだ。

 

今回万博の誘致に上手くいったのは、維新が官邸に積極的に働きかけたなどの理由はあるものの、大阪市と大阪府が十分に連携できたことが大きい。これは前大阪市長・吉村氏と全大阪府知事の松井氏が同じ党に所属していて、府と市の利害を調整できる人間関係があった。

維新の言葉を借りれば”バーチャル大阪都”状態だったためであり、これを制度として確立するのが大阪都構想だ。

話が逸れたが、大阪の開発は大阪市域の街を中心に進むため、まず恩恵を受けるのは大阪市域だと主張したい。

そしてその恩恵が広がっていき、大阪府下や近隣の兵庫県、和歌山などに広がっていく。

 

損をするのは大阪市議会を中心とする既得権益(市議会議員、市役所、それら癒着する業者・・・)であって、大阪市民ではない。

一見中立的であるが中身は反都構想である大阪自民が作ったサイト(詳細は調べてみて下さい。今さら聞けない大阪都というサイトです)には、「損をするのは大阪市民」といった主張がされている。

でも、実際に一番割を食うのは彼らだから、そんな風に書いているのだ(笑)

 

選挙とは比較であって、一番”マシ”な政党を選ぶべきだ

選挙とは自分にとってベストを選ぶ場ではない。今ある候補の中から一番”マシ”なものを選ぶ制度なのだ。

大阪維新について肯定的に書いてきた筆者だが、彼らが主張するイデオロギーや政策にすべて賛成というわけではない。確かに他党が言うように強引なところがあるし、改革を謳う政党にしては女性候補の割合が少ないと思う。高齢者受けを気にしてか、夫婦別姓や選択制などリベラル的な改革には消極的だ(筆者はリベラル的改革がもっと必要だと思っている)。

 

それでもなお。それでも。

今、大阪に住んでいる人にとって最もまともな選択肢といえば、維新しかないように思われる。

実際、橋下改革以降、難波筋線の計画を前進させ、無駄な補助金をカットし、議員数を削減し、万博の誘致に成功し、メトロを民営化し(トイレがきれいになったし古臭い売店がローソンになった)、大阪城公園や天王寺公園を民間による運営に改革し(外国人でごった返すようになり、園内にはコンビニができた)、数々の成果を上げてきたのも事実である。

 

つまり、「自分にとって最高の政党はどこか?」ではなく、「今ある選択肢の中でまだ期待できる政党はどこか?」という視点で考えるべきだ。

細かいところに不満があったとしても、一番”マシ”な政党に期待するほかないのだ。

少なくとも大阪の現状維持を主張し、何も改革しようとしない既存政党よりはベターな選択肢だと思う。

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