新産業の中心地になることは都市の成長に大切です
(写真はGoogle)
前に「よそ者を受け入れる懐の深さが大切だ」という旨の記事を書いた。
今回はその続きである。
さて、オンリーワンという言葉がある。
「みんなそれぞれ違っていてそれぞれ素晴らしいんだ」的なニュアンスを含んだアホっぽい言葉なのであまり好きではない。
しかし、大阪や関西の将来を考える際にはオンリーワンになれるかどうかが重要だと思われる。
今回は「中心地であること」をテーマにしたいと思う。
東京に一極集中する理由
渋谷(2019年撮影)
物価が高くて超過密都市である東京に、日本中の企業が集まってくる理由は何だろうか?
これは議論が様々ある。
例えば東京に不動産を所有している会社の社長さんであれば「東京に競争力があるからだ」と答えるだろうし、大阪であれば「立法権や行政権が東京に集中しているから」など様々である。
回答はその人の考え方や社会的地位、出身地によって大きく影響されるだろう。
それを踏まえた上での私の見解だが、東京一極集中の一因は東京があらゆる仕組みの中心地であるからだと思う。
東京は政治の中心地であり、行政機関の中心地であり、皇室機関の中心地であり、経済の中心地である(←最後は認めたくないが)。
天皇陛下に会いに行こうと思えば、京都ではなく東京に行かなければならない。
銀行の業界団体の集まりに参加しようと思えば、東京の帝国ホテルに行かねばならない。
業界団体のルール作りに参加しようと思えば、普段から東京に拠点を置かないと不利である。
その業界や産業、分野において中心地であるから否が応でもヒトモノカネが集まってくるのだ。
もちろん東京は都市として魅力があるのは事実だし、様々な人が東京の発展に尽力してきた結果でもあるとは思う。
ただ、制度上あらゆるものが集まってしまう仕組みになっているのは否定できないだろう。
今の大阪はどうだろうか
中之島には関西系企業の本社が数多く立地してはいるが・・・
今の大阪には、日本や世界において中心地と呼べるほど圧倒的な産業があるだろうか?
やはりほとんどないのが正直なところである。
確かに、大企業の本社もそこそこ集積してはいる。
特に製造業の関連産業の集積は厚く、東京一極集中が進む2020年になっても本社機能を大阪市内に置いていたりする。
(パナソニックや日清のように登記上の本社本店だけ残すなんちゃって本社ではなく、営業本部から社長室機能までフルで備えた本社機能のこと)
引用元:2019年度版 なにわの経済データ
大阪府が毎年発行している「2019年度版 なにわの経済データ」によれば、2014年時点で、資本金100億円以上の大企業は106社ある。
その内大阪府内に単独本社を置く企業が69社、複数本社(大阪がメイン)は30社、複数本社(大阪がサブ)は9社ある。
大阪人が思っている以上に大阪には本社機能が残っているのである。
ただ、経済において他を圧倒するぐらいの中心地かといわれると厳しいと思う。
あくまで集積しているだけだ。
因みに江戸時代の大坂は商業の中心地であり、明治から昭和にかけては商工業の中心地であった。
ビジネスに優れた人材や人的なネットワーク、豊富な資金などが集まっていたので、商業を志す人は自然に大阪にやって来たわけである。
これは前回の記事「よそ者を受け入れる懐の深さ」でも触れた通りである。
今後10~20年で新産業を生まなければ、大阪の発展はない
ガツンと新産業を生めるかな
今後、大阪は10~20年の間に新産業をどれだけ生むか、そしてその産業の中心地になれるかどうかが重要である。
そうでなければ本当の意味での”大阪の復活”はないだろう。商業や工業などビジネスで成り立ってきた都市なのだから、経済が復活しないとダメだというのはごく当然である。
なぜ新産業の中心地を目指すべきかといえば、産業が固まっていないので競争に勝ちやすいということや、競争相手が少ないこともあって儲けやすいということ。
そして何よりも新しい物好きな大阪にとって、新産業の育成は向いているからである。
ではどのような産業が大阪の次世代産業として有望だろうか。
一般に言われていることをとりあえず書きだす。
私も産業の細かい部分まで調べ切れていないので、あくまで一般論的な内容にとどめる。
①インバウンド産業
これは説明不要。
今はコロナで絶不調だが、今後数十年単位で見たときにますます伸びていく有望な市場だと思う。
①エンタメ産業
もともとお笑い気質やおもてなし文化がある土壌であり、今後、IR(カジノを含む統合型リゾート)ができることに合わせて、エンターテインメント産業を勃興させようという考え方がある。
大阪はeスポーツ(≒ゲーム産業)にも力を入れており、2020年の3月にはエキスポシティにeSports専用の施設がオープンした。
②ライフサイエンス産業
関西は病院や研究機関の集積が厚く、大阪万博2025と絡めて新産業を生もうという考え方。
今後国全体がますます高齢化していくので産業のすそ野が広がる上、数十年遅れてアジア諸国が高齢化する。輸出ビジネスのチャンスもあり。
また、インバウンドと絡めて医療ツーリズム(医療を受けに来るついでに観光をすること。その逆もあり)の発展も期待できる。
最近アンジェスという阪大初のベンチャー創薬企業が新型コロナ向けのワクチンを開発すると話題になっているが、これもその一つに含まれる。
①~③はそれぞれ別個に発展するのではなく、互いに絡み合いながら発展するのが理想的だろう。
個人的な推しは?
情報通信産業のど真ん中が開いているカモ
因みに筆者は次世代産業として「④ 情報通信産業」を推している。
構想は色々あるが、とりあえず平たく平たく平たくかみ砕いていえば、ネットテレビ局である。
先ほど書いた通り、大阪はエンタテイナー気質があったり、目立ちたがり屋が多かったり、何かと個性が強い(もしくは強い個性を放任する)都市であると思う。
東京のキー局で騒いでいるお笑い芸人のかなりの数が関西弁をしゃべっていることからもよく分かるだろう。
情報を切り出して面白おかしく表現する技術やそれを促す風土があるにもかかわらず、それを発信するプラットフォーム(=テレビ局、YouTuberチャンネル、独自のプラットフォームなど)を持っていないのは端的に勿体ない。
また、国内に囚われず世界をマーケットに据えれば、関西は京都を中心として日本文化の源泉だったのだから、ネタになるコンテンツは沢山ある。
世界の人口は70億人以上。ニッチなコンテンツでも十分産業になる。
色々書いたが、このギャップに次世代産業を興せる余地があるのではないかとみている。
だから東京に出て中途半端なユーチューバーとしてメントスコーラをするより、関西で新産業を興す気概を持って情報発信した方が面白いのになぁと勝手に思っている(笑)。
また、インターネットを通じた情報通信革命はまだ始まったばかりである。今後数十年で社会の在り方は大きく変わっていくだろう。
その変貌はまだ誰も分からない。私も全く分からない。ただ社会が大きく変わっていくことだけは分かっている。
その伸びゆく産業を見ずに、大阪近郊の工場でネジを作り、外国人観光客にタコ焼きを売るだけで良いのだろうか?
製造業は製造業の良さが、飲食業には飲食業の良さがあるのだが、エンターテイメントの最も重要な要素である”笑い”を作り出すのが上手な街が、情報通信産業のビッグウェーブに乗らないのは勿体ない。
しかもマーケットはある。この部分はまた暇なときに説明するかもしれないので一旦割愛する。
今回の記事の主張を要約するなら、大阪が復活するためには大阪が何かの中心地になる必要があり、そのためには新産業を興す必要があるということだ。
以上です。
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