タクシーが目前を通過する大阪市役所
今は新型コロナの流行で都構想の出前協議会が実施できなかったりで、ひょっとすると2020年秋冬の住民投票が遅れるかもしれないといわれている。
住民投票で過半数が取れれば、2025年の1月1日から新生・大阪府(大阪都)が誕生することになる。
私は都構想に賛成の立場であるが、皆さんはどうだろうか?
賛成派と反対派では意見が正反対である。
賛成派は「都構想で大阪の経済は良くなる」というだろうし、反対派は「大阪市の財源が失われる」「母都市である大阪市を失えば大阪経済はダメになる」と主張する。
では私はどう思っているかといえば、「都構想で大阪の経済は良くなる」は半分正しくて半分間違っていると思っている。
都市戦略が一本化できる意味では正しい
大阪都構想では大阪市が廃止され、4つの特別区(北区・中央区、淀川区、天王寺区)に分割される。そして港湾整備や大学、鉄道、都市成長戦略といった広域行政は大阪府に移管される。
従来のように大阪府と大阪市の足並みがそろわず、オリンピックの誘致にたった5票しか入らなかったり、同じサイズの中央図書館があちこちにできる無駄な2重行政はなくすことができるだろう。
大阪は中心都市が大阪市であるから、本来はここを拠点にして関空や伊丹、京都など他都市との導線を考えなければならない。
大阪市は直接メリットにならない関空との導線よりも、大阪の端っこを通る今里筋線の建設に血眼になっていた。
府と市の壁が無くなれば、大阪府(大阪都)はよりダイナミックな都市の成長戦略を打ち出せるようになるだろう。
また、大阪府や大阪市が国に対して権限移譲(地方分権)を迫った際、霞が関からは府と市がバラバラで受け入れ体制がなっていないことが指摘され、上手くいかなかったことがある。
都構想はその先にある地方分権や道州制も視野に入れているのだろう。
(道州制は大阪の成長に最も必要だが、これは平成30年間言われ続けて実現できなかった難題であり、今回は触れない)
だからそれらの意味では、「都構想が大阪の成長につながる」は正しい。
しかし次のステージに上がるには、”民間経済の活力”が不可欠
中国人が「ここはアジアか」と突っ込む位のエネルギーが大阪には必要だ
しかしあくまで都構想は大阪という大都市の背骨部分であり、都市の仕組みでしかない。
仕組みは大変重要ではあるが、大阪の成長には民間経済の活力がそれ以上に重要なのである。
大阪は本来は何もない街である。
前の記事でも触れた通り、東京や京都と違ってストック(首都機能や神社仏閣など)がない。
それでも大都市として発展できたのは、ビジネスに長けた人材が集まっていたり、突き抜けたことを許容する商業としての文化や風土があり、そこから数々の技術革新が生まれてきたからだ。
一方、東京は少し違う。
経済がどれだけ大きくなっても、東京のコアは政治行政の機能である。仮に国会や行政機関が全て地方に移転したら、「東京とはいったい何なのか?」という議論が生まれ、「何もない」という結論になるはずである。
(東京は政治行政都市として発展しただけあって民と官の距離が近かったり、官僚的な能力が求められる大企業の運営能力には長けている。否定しているわけではない)
だから東京で政治改革が進めば、それは都市自体の機能を変えることに繋がる。
でも大阪のコアは政治行政ではない。
どれだけ府や市の政治改革が進んだとしても、それはあくまで大阪経済をサポート機能する機能であり、本丸は経済の活性化である。
その意味では「都構想では大阪経済は良くなる」は間違いである。
都構想反対派が指摘しているのはこの点なのだろうと思う。
経済の方にももっと目を向けてみては?
大阪は他の地域に比べて、圧倒的に地域行政への関心度が高い。
都構想を考えて欲しい。大阪以外でも都道府県と政令指定都市の関係に悩んでいる地方は多い。一時期、新潟州構想が出たり、横浜の特別市構想が出たりしたが、市民の関心がないので盛り上がらずポシャってしまった。
都構想がこれだけ議論されるのは、大阪府民や周辺都道府県の住民が大阪のあり方に関心を持っているからに他ならない。
私はこの特殊な地域風土は次の時代を開くエネルギーになると思っているし、地域に関心を持つのは良いことである。
しかし、政治家を応援しても経済を良くすることはできない。政治家は利害を調整したり法律を作成することはできても、ビジネスマンではないからだ。
都構想で確かに大阪は”良く”なるだろう。しかし、大阪が次のステージにレベルアップするには経済を変えなければならない、ということだけは知っていてほしいなと思う。
以上です。
コメント
政令市とはどのような制度なのかきちんと勉強しておく必要があると思います。
・政令市は関係府県が地方分権を強行に反対して出来た妥協の産物である。
・地方自治法に特別市条項があった。
・特別市は都道府県と同じ権限をもった都道府県と同格の自治体とされていた。
(国と特別市の2階層になり、行政機能の効率化と地方分権が可能な制度であった。)
・政令市長会では政令市を特別市に移行させるため、地方自治法に条項復活を
求めてきた。
・政令市へ道府県から大部分の行政事務が移譲されている。
・政令市から道府県議を選出する意味があるのかという議論もある。
(時々おこって騒ぎになっている某東北地方のS市がある。)
・政令市から徴収されている道府県民税など道府県による課税は政令市への還元が
ほとんど無いのが実情である。道府県は政令市で行う行政事務がないため、
政令市以外で使われている。
・道府県の施設が政令市にあったとしても、政令市から徴収した税に比べれば
雀の涙にもならない。
・道府県の施設が政令市にあることが二重行政というなら道府県が余計な仕事
しているだけである。
・施設が政令市にあるとすれば、道府県民の一番利便性が高い場所が政令市内と
なってしまうからでしかない。
・比較的あたらしい政令市の住民は県からほとんどの行政事務が市に委譲されたこと
は知っている。(某東北地方のS市では小学校の副読本で教えている)
・県に納税しても政令市以外で使われることについて知っている人は知っている。
(某東北地方のS市に対してM県からお金を少し渡すことで妥協はしたが
いまでも燻っている。)