大阪市視点で見れば、地下鉄を市外に延伸しないのはごく当然だ

政治行政(都構想など)

北・北改札?

2018年の4月に大阪市営地下鉄は民営化され、大阪メトロとして再出発を果たした。

民営化以前から外部の経営者を取締役に登用するなど組織改革を進めており、民営化以前から職員のお客様対応が改善されたり、駅のトイレの美化が進んだりしていた。

今のところ、民営化による直接的でインパクトのあるメリットは感じられていない。

 

ただ、新生・大阪メトロは中長期的には大きく変わっていくだろう。

最近発表した中期経営計画では、中央線にとびっきりの新型車両を導入し、日本初となる顔認証の改札を2024年度までに完成させる計画を発表し、駅のリニューアル(特に梅田のデジタルサイネージは面白い)を進めるなど、大阪市民をワクワクさせてくれるような方針を打ち出している。

 

さてそんな大阪市営地下鉄(現:大阪メトロ)であるが、以前から中途半端なところで止まったり、(それなりに需要があるにもかかわらず)大阪市外に延伸しようとしないなど問題点を指摘する声があった。

例えば大阪の大動脈・御堂筋線と江坂駅で相互直通している北大阪急行。「なぜあそこでブッチしているのか?」と思ったことはないだろうか?

素人考えからすれば、「利益が上がるのであれば延伸した方が得なのではないか?」と勘ぐってしまう。

 

それは大阪市にとって大阪市営地下鉄(現在は大阪メトロ)を他の地域に伸ばしても得られる利点が少ないからだ。

その理由も含めて、これから記事で説明していこうと思う。

大阪都構想が実現したら名称は「大阪都」に変更すべきか?

大阪都構想は人口が減少しつつある大阪にピッタリな制度だ

記事の要約!

・市内に地下鉄を引くメリットは・・・
①人口増によって住民税が増える
②地価が上昇し固定資産税が増える

・大金を投資して市外に延伸しても、①②のようなメリットを得るのは他市であり、大阪市は得をしない

・大阪府全体では必要な地下鉄の延伸であっても、大阪市の利益のみで考えると却下される可能性がある

市内に地下鉄を引くことで大阪市が得られるメリット

まずはそもそものところから考える。

大阪市にとって地下鉄が市内に張り巡らされることによって、どのような利点があるのだろうか。

一つは、地下鉄の開通で都心に通勤通学しやすくなることで、利便性を求めて沿線の人口が増加し、市民税(市町村民税)の増収が見込めることがある。

 

都心に通学する手段として最も経済的で便利なものは電車である。

通勤や通学のために新居を探す際、ほとんどの人は利用する路線沿線で家を探し、できれば駅チカ物件を借りようとするだろう。

それまで不便で小さな民家やスーパーしか立ち並んでいなかった地域に、地下鉄が延伸したことで駅前にタワーマンションが建ち、新しいスーパーができ、住民が一気に増加するシーンは容易に想像できると思う。

 

大阪市の市民税は・・・<均等割:3500円><所得割:所得の8%>を合計した額になる。

平成22年度(2010年)で少し古いデータであるが、大阪市一人当たりの個人市民税は11.4万円である。

単純計算をすれば、人口が一人増加すると大阪市には11.4万円の税収が入ることになる。

駅前のマンションに住むような人は所得水準が高い傾向にあるので、これより高額の市民税が大阪市に入ることになる。

 

このような税収の増加が長期的に見込めるのであれば、1キロ当たり200~300億円とも言われる建設費を投じてでも、地下鉄を敷設したり延伸したりすることは十分すぎるほどアリだと思う。

更に税金についていえば、増収になるのは住民税だけではない。

 

さらに地価の上昇により、固定資産税もアップする

大阪市を含む全国の市町村にとって固定資産税・都市計画税は重要な財源の一つだ。

2019年度予算では、税収7500億円のなかで固定資産税・都市計画税は3500億円あり、税収のほぼ50%を占めるに至る。

 

普段の生活ではなかなか聞き慣れない「固定資産税」という言葉だが、ざっくり言えば、固定資産税とは土地や建物にかかる税金だと考えればよい。毎年、資産価値の1.4%が課税される。例えば1000万円の土地なら毎年14万円の税金がかかる。

固定資産税は地価に連動して決まる。地価が上がれば固定資産税もアップするし、逆に地価が下がれば固定資産税も減額になる。

※なお、これは企業や大家さんにとっては大変痛い出費ですが・・・(笑)

 

地下鉄が伸びて駅沿線が便利になると、居住希望者やオフィス入居希望企業が増え、その地域の地価が上昇することは想像にたやすい。

そして地価が上がれば、その地域から徴税する固定資産税は増える。

単純計算ではあるが、地下鉄が通ったことを機に地価が1.5倍になれば、固定資産税収も1.5倍増える。

 

逆に・・・市外に延伸すると大阪市が損をする可能性もある

一般に、都会の始発駅には大きなメリットがある。それは確実に席に座って快適に通勤できるためだ。

大阪は東京ほど通勤距時間が長いわけでもなく混雑も大分ましではあるが、それでも朝の混雑を考えれば、始発駅であることの旨みは見逃せない。特に御堂筋線は東京並みの混雑だ。

 

仮に市外に延伸したとすると、近隣の市町村が始発駅になり、市外の駅の利便性が高まる一方で、まわりまわって大阪市内の駅周辺の魅力が低くなって地価を損ねる可能性すらある。

大阪市の地価が低下すれば市税が直接減少するので、このような事態は避けねばならない。

 

だから大阪市視点では、市外延伸のメリットは少ない

住民税や固定資産税といった税収の視点でいえば、大阪市にとっては市外に地下鉄を伸ばすメリットはあまりないのだ。

冒頭で述べた御堂筋線と北大阪急行(北九)の話に戻れば、江坂以北は大阪市外(吹田市、豊中市)であり、大阪市は数百億という莫大な鉄道投資をしても、住民税や固定資産税は増えない。

吹田市と豊中市が得をするだけで、大阪市には鉄道敷設の赤字が残るだけだ。だから大阪市営地下鉄(現:大阪メトロ)ではなく、北大阪急行という別会社(阪急の子会社)が鉄道を敷く形になったのだ。

 

大阪の地下鉄は妙なところで(大阪市と他市のギリギリの境界)切れていることが多いが、それは大阪市の怠慢として責めるのは筋違いであり、それは損得勘定に基づく”ごくごく合理的な判断”なのだ。

大阪全体で考えれば「損」であるにもかかわらず、大阪市にとって何が一番得かという視点で考えるため鉄道が延伸されない。ここでも”市営”によるジレンマが見え隠れしている。

 

もちろん市外に鉄道を伸ばすことで利用者が増加し、建設費以上に運賃収入で儲かるなら、延伸するのも大いにありだろう。

ただそれでも他の市が税収の面でまる得するので、大阪市にとっては気分の良いものではない。

 

100年以上の歴史がある大阪市営地下鉄は昨年2018年の4月に民営化され、新しく大阪メトロとして走り始めた。

地下鉄の民営化には、経営の合理化以外のメリットもある。

つまりこれまで説明してきた通り、地下鉄は大阪市という枠組みに囚われず延伸を考えられるため、以前より柔軟に路線を伸ばせるようになる。

 

大阪市周辺は不採算地域が多くすぐに延伸とはならないだろうが、ひょっとすると市外への延伸計画が発表される可能性はある。

その意味でも民営化は大きなメリットになるだろう。

★民営化後の大阪メトロが凄まじく暴れている話(2019年4月中期経営計画より)

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