出直しダブル選で演説する松井吉村両氏(4月6日難波駅前)
最近10年近くずっと大阪で話題になっている大阪都構想。
まずは制度について議論をして、その後、府議会と市議会両方で過半数の賛成を得て、住民投票でさらに過半数以上の賛成を得る必要がある。
実現までの手順はかなり大変ではあるが、今回はとりあえずそれらをすっ飛ばして、仮に大阪都構想が実現した場合、大阪府は「都」に名称変更すべきかどうかを考える。
唐突な質問過ぎてどういうことか分からない人もいると思うので、まずは、都構想をめぐる都道府県の名称について議論を整理していく。
記事の内容を要約!
・大阪都構想は2012年に成立した「大都市法」によって実現可能となった
・大阪都構想が実現しても名称は「府」のまま。「都」へ変更するには別途法律の改正が必要
・「都」へ名称変更するための法的手順はいろいろある
・将来の一部首都機能の大阪移転などを考えると、ダサくても「大阪都」に変更すべきだと思う
実は…大阪都構想が実現しても、名称は大阪府のまま
大阪都構想は、大阪市と大阪府の対立によって発生する税金の無駄使い・二重行政を防ぐため、「府市統合」などと提案されてきた行政改革で、橋下徹氏の手で「都構想」というキャッチ―なネーミングになった。
実は、大阪都構想は近年まで法律上実現不可能で(だから反対派からは「無謀だ」と言われていた)、2012年に制定された法律でようやく可能になった。.
それは「大都市地域における特別区の設置に関する法律(通称”大都市法”)」という法律だ。橋下氏率いる大阪維新の会は国政進出を匂わせることで、維新との対立を恐れた国政政党(自民や公明など7会派)にこの法案を共同提出させ、2012年に可決・成立させた。
法律の内容をザックリかみ砕けば以下の通りである。
大都市地域特別区設置法の概要
・人口が200万人以上の政令指定都市(+周辺の市も含む)では特別区を設置できる(=都構想を実現できる)
・住民投票を実施して過半数の賛成があれば、特別区を設置することができる
・現状では、「府」から「都」への名称変更について法律では詳しく書かれていない
大阪市は人口が269万人(2015年現在)の政令指定都市であり、条件上は都の設置が可能だ。.
ただし少しややこしいのは、仮に大阪都構想が実現して大阪市に4つの特別区が設置されても、現状の法律では、名称は大阪府のままであるという点だ。
都構想都構想と巷では言われるが、都構想単体では大阪府は大阪都にはならない。
名称変更には別に法律制定が必要
さて、大都市地域における特別区の設置に関する法律の適用を経て、”都”になった大阪であるが、名称は大阪府のままだ。
国の法律(大都市法、地方自治法)には、「都」への名称変更については何も書かれていないからだ。
府から都へと名称を変更するには、新たに法律を制定する必要がある。
因みに、都道府県において、「都」という名称は”首都”や”みやこ”を意味するのではなく、特別区を抱える道府県を意味している。
つまり「都」とは制度上の名称であり、大阪都構想が実現して特別区が設置された場合、首都でなくても大阪都へ名称変更することは可能だ。.
大阪都構想が実現して特別区が設置された場合、大阪府の名称変更を可能にする法律を制定するのが自然だと考えられる。
名称変更の手順は住民投票があるヤツとないヤツがある
さらに名称を大阪都に変更するには、大阪府全域での住民投票での過半数以上の賛成が必要だとも言われているし、住民投票の同意なく変更できるとも言われている。
どっちやねん!(笑)と突っ込みたくなるところだが、それぞれ解説する。
① 住民投票があるパターン
大阪府の名称変更を許可する地域特別法を制定することで、府から都へ名称変更する方法である。
憲法95条では、特定の自治体(今回は大阪府)にのみ適用される法律を制定するには、住民投票での承認が必要だとされている。
そのためこの場合、大阪都に名称変更するためには、①住民投票で過半数の賛成⇒②法律制定という手続きになるだろう.
② 住民投票なしパターン
次のパターンは地方自治法または大都市法を改正し、道府県の名称変更について新しく規定を設ける方法である。
この場合は一部の特定地域ではなく日本全国に適用される法律であり、住民投票を行わずに自動的に「都」に名称変更がされると言われている。.
”大阪都”は超絶ダサいが、名称変更を支持する理由
で、大阪都という名称については、皆さんはどう思いますか?
私は超絶にダサいと思っている(笑)
名称としても大阪府の方がしっくりくるし、耳慣れた大阪府という名称を捨てるのは少し寂しい気分がする。
でも、”都”という名称になることで大阪は得をすることが数多くある。
① ”大阪”に対する人々の認識が徐々に変わる
恐らく今生きている私たちの世代は、名称が”大阪都”になったとしても大阪に対する認識はすぐには変化しないだろう。
一方、これから生まれてくる新しい世代はどうだろうか。
例えば、小学校で都道府県について学習する際、「日本には東京都があってその他には大阪府や京都府、北海道があり、その他は全て県です。」と教わるのか、「日本には二つ”都”があり、一つは東の東京都で、もう一つは西の大阪都。規模としては行政機能のある東京ですが、大阪都は独自性のある商業の都として栄えています」と学習するのかでは、えらい違いだ。
時代が進み、東京都と大阪都を二元対立で捉える世代が増えてくると、あらゆる面で大阪は得をすることになると思う。
もちろん名称上の違いではあるのだが、頭で日本地図をイメージするとその違いを感じられませんか?
英語で言えば府は「Prefecture」であり、都は「Metropolis」だ。因みに県も府と同じ「Prefecture」である。
今後大阪では、東京より安い賃料や豊富な観光資源、アジアとの近さを評価して外国企業が多数進出してくるだろう。
外国人は日本の都市に対して偏見がなく、フレッシュな視点で大阪を見てくれる。大阪が首都東京と並ぶ「Metropolis」なのか、その他42府県と同じ「Prefecture」であるのかで扱いが変わってくると思う。
そして下で説明する首都機能の移転もその意識の変化の先にあるものだ。
② 将来を見据えた首都機能移転の呼び水となる
東京一極集中がますます進む日本において、地震などの災害に備えてリスク分散を図るのはごく合理的な話だ。
人口1億2000万人の島国において、人口の約3分の1にあたる約4000万人が東京圏に暮らしている状況は国家として明らかにいびつだ。
地震や大規模な水害がない地域であればいいのかもしれないが、日本は災害大国である。
首都圏はそもそも地質学的に安全ではないことを考えれば、首都機能をバックアップする地域が他の地方にあっても何ら問題はない。いや、むしろ推奨されるべきだ。
恐らく日本各地の人に首都機能の一部移転をどう思うかと尋ねれば、東京に住む人を含めて賛成する人が多いのではないか。
また、その移転先の候補地として最有力候補に挙がるのは間違いなく大阪だ。
名称が大阪都になって大阪のリーダーは大阪市ではなく大阪都(大阪府)だとはっきりできれば、その意味でも首都機能の移転がしやすくなる。
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コメント
大前研一さんは京都と合併して「本京都」がいいって言ってましたね。
「都」なんてあからさま過ぎてダサいと思うけど、「府」もmetropolis的な意味なのにprefectureなのはムカつきますね。
理想論は大阪と京都が政治的に一体化することでしょうが、現実的には厳しいでしょうね。
京都が大阪維新を受け入れるとは思えませんし、大阪が京都の支配下に入るとも思えません。
クソダサいし他府県から馬鹿にされる可能性大ですが、今の制度上『都』と名乗るメリットは十分あるので、名称変更すべきだと思います。
ただ、大阪市が大阪府を受け入れるなんて10年前は考えられませんでしたし、維新ならやってくれるのではと期待しています。というかそうしないと近畿は立ち行かない。
盟主としての地位(例えば本会議場の位置や首都の地位)は京都に譲って、実利は大阪(地政学的にそうならざるを得ない)とか…などと親や本籍が京都で大阪民の私は思います(笑)