大阪都構想で設置される「特別区(4区)」とは一体何者なのか?

政治行政(都構想など)

大阪市役所(都構想実現後は、北区の区役所として利用予定です)

大阪都構想では、大阪市が4つの特別区に再編される予定だ。そして広域行政は大阪府が行い、身近な住民サービスは特別区が行うとされている。

ご存知の通り、大阪都構想は、2015年の5月にその是非を問う住民投票が実施され、賛成69.5万票、反対70.6万票という僅差で否決された。

その当時は橋下徹というカリスマ性のある市長に主導されていたこともあり、賛成に投じた人であっても、新設される特別区とはどんなものなのかを具体的に理解していた人は少ないのではなかっただろうか?

それは今2019年になってもあまり変わっておらず、まだまだ特別区に対する理解が浸透していないのが現状だろう。

 

引用元:副首都・大阪にふさわしい大都市制度【試案B(4区B案)修正版】平成30年4月6日(大阪市)

上は現在案として検討されている特別区4区の区割りだ。第一区~第四区という味気ないネーミングだが、今後、より良い名前が検討される。

今回は簡単に特別区とは何なのかを解説しようと思う。

 

特別区とはザックリいえば”市町村モドキ”または”中核市モドキ”

中央線(けいはんな線)は中核市の東大阪市を東西に縦断している

タイトル通り、特別区とはザックリいえば”市町村モドキ”である。

つまり、実態としては特別区はほとんど市町村と同じ機能を有しているということだ。

普通の市町村と同じく区長選挙が行われるし、区議会もある。大阪市と同じく区役所には窓口があるし、必要な行政サービスが受けられる。

 

東京ではすでに都区制度が取り入れられており、港区や千代田区、世田谷区など特別区が23区設置されている。

さらに言えば大阪都構想では、本家の東京都区制度の改良版を目指しており、東京であれば区ではなく都が担っている保育所や老人ホームの設置許可なども、大阪では特別区が担う予定だ。

大阪都構想では特別区に中核市レベルまで仕事を配分しているため、”中核市モドキ”と表現することができるだろう。

※中核市とは・・・人口が20万人以上が要件の一つ。大阪府では豊中市や東大阪市、寝屋川市などが中核市である。福祉に関する権限が都道府県から移管されるなど、普通の市より仕事の幅が広い。

 

ただ、単純に市町村と同じであれば”モドキ”は付けない。モドキと付くからには普通の市とは違う点がいくつかあるからだ。

特別区が中核市モドキである点を2点挙げていく。

 

① 大阪府とお財布のつながりが深い

財政調整制度のイメージ図(分配する金額はあくまで参考)

普通の市町村との違いの一つは、都道府県(大阪府)とお財布(財政)の面でつながりがあることだ。.

普通の市町村は税金集めてそのままその市町村が使用できるが、特別区の場合は、主要な財源(法人区民税や固定資産税など)は一度府が集め、その後、特別区に分配する仕組みを取っている。

これを行政制度の用語で「都区財政調整制度」という。

 

これはそれぞれの特別区で発生する税収の差を埋めたりするために実施される。

例えば大阪市内であれば北区や中央区の税収がぶっ飛んでよく、ここの税収を他の地域にある程度分配しなければ、例えば西成など生活保護が多い地域は立ち行かなくなる。

このような特別区の間で起きる税収差を、ある程度均等にできる制度が財政調整制度であり、これが他の市にはない特別区の特殊な点だ。

 

② 一部の仕事は特別区に代わって大阪府が行う

大阪都構想では、身近な住民サービスは特別区が行い、大阪全体にかかわる広域行政は大阪府が行うという設計思想が徹底されている。

 

例えば保育園や特別養護老人ホームなど中核市に属する仕事や、普通なら政令市に属する自動相談所の設置権限も新設される大阪4区であれば、特別区の権限となる。

因みに東京都の特別区(東京23区)であれば、これは東京都の権限であり、特別区にはない。

特別区(大阪) 特別区(東京)
保育園・老人ホームの設置の認可権 ×
児童相談所の設置権 ×

 

一方、現状では市が実施している消防や上下水道などは、大阪府全体で行った方が効率が良くなるという観点から、特別区ではなく、大阪府が行うことになる。.

上下水道であれば、従来の大阪市水道局ではなく、大阪府水道局(大阪都水道局?)が水道水の維持管理を担うことになるのだ。

普通の市 特別区(大阪)
上下水道の運営権 ×
消防の運営権 ×

 

余談だが、大阪府内では、大阪市以外の42市町村は大阪広域水道企業団に統合され、取水と浄水は一体的に運用されている。

これにより、42市町村全体で年間200億円以上のコストカットのメリットが生まれている。

 

因みに・・・行政区とは何が違うか?

よく比較されるのは行政区との違いだ。

行政区とは今ある大阪市の区のことであり、例えば、大正区や東住吉区、鶴見区、港区などが挙げられる。

一言でいえば、行政区は大阪市を線引きした単なるエリアであり、それ以上のものではない。だから区長選挙はないし、区独自の政策はほとんど実施できない。

 

都構想が実現すれば、従来の行政区(例えば住吉区)から、新しい特別区(中央区)になるが、同じ区という名称を名乗っていても、実態は全然違う。

従来の行政区は単なる区分に過ぎなかったが、新しい特別区は区長が選べるし、区独自の政策を受けられるようになる。

 

記事は以上です。

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