「グレーター大阪」構想とは一体何だろうか

ここ最近は大阪都構想に関連した記事の執筆が続いている。

現在想定されている大阪都構想は、大阪市の再編(解体)をメインターゲットとしている。

つまり、大阪市を廃止し、基礎自治体として4つの特別区を設置し、広域行政を大阪府に一本化することを目的とする。

しかし都構想が橋下徹元大阪府知事によって提起され始めた当初は、大阪市だけでなく周辺自治体を広く統合した「グレーター大阪」をつくることが都構想の目的だったように記憶している。

グレーター大阪とは?

画像引用元:大阪都構想 – Wikipedia

上が2010年3月時点で、維新勢力が構想していたグレーター大阪の当初案だ。

現在提案されている都構想とは違い、堺市が3つの特別区になっており、大阪も7区、さらに周辺市町村である豊中市・吹田市・守口市・八尾市・松原市・大東市・門真市・摂津市・東大阪市も特別区として含まれている。

 

どうして特別区のターゲットは大阪市だけになったか

グレーター大阪構想を実現するためには、大阪市だけでなく、同じ政令市の堺市、周辺市町村からの賛成を取り付ける必要がある。しかし、それはほぼ不可能だ。

政令市を特別区に再編するには住民投票で過半数の賛成を得る必要があり、ご存知の通り、2015年5月17日の住民投票では僅差の反対多数で否決された。

一気にグレーター大阪を実現したい場合は、大阪市と堺市の2カ所で住民投票を行い、どちらも勝たねばならない。

堺は大阪市ほど都構想に賛成ではないから、一気にグレーター大阪を実現するのはなおさら厳しいだろう。

 

2013年9月に堺市で実施された市長選挙で反維新(反都構想)の竹山氏が当選し、市町村の議会承認が必要な都構想に堺市を参加させることは実質的に難しくなった。

 

大阪都構想区割り案(4区)

その後、大阪都構想のメインターゲットは大阪市と大阪府の2元行政の解決に焦点が置かれるようになり、大阪市の再編(解体)が主張されるようになった。

どうしてグレーター大阪を目指すのか

一つは現在は市町村ごとで行われている消防や上下水道、公共交通(旧大阪市営地下鉄)を大阪府が一括で行い、効率性やサービスの質を上げられる点だ。

単純に考えて、消防や水道を一つ一つの市町村で行っていても効率が悪い。それよりも広い範囲で一括して大阪府が行った方が、効率が良いという話だ。(ただ、水道は大阪市を除いた広域行政団が完成している)

 

また、公共交通つまり旧・大阪市営地下鉄もそうだ。

例えばドル箱路線の御堂筋線は江坂(吹田市)という中途半端なところで切れており、それ以北は北大阪急行が直通運転している。

詳しい説明は別記事(大阪市視点で見れば、地下鉄を市外に延伸しないのはごく当然だ
)を参考にしてほしいが、要は大阪市の市営であれば、市外に延伸するメリット(税収アップ)などがなく、延伸できない。

大阪市が特別区になれば自動的に大阪市から運営権が奪われるため、民営化もしくは府営化ができ、より自由に延伸できるようになる。

 

グレーター大阪は段階的に進む?

ただここで押さえておきたいのは、維新の会はグレーター大阪を諦めていないということだ。

グレーター大阪の実現の手順としてまずは、本丸である大阪市の特別区化を進め、2025年に都構想が実現させる。

そしてその後、堺市や東大阪市、北摂の市町村を含めて特別区への編入を議論していくのだろう。

 

都構想実現後、周辺市は住民投票なく特別区に編入される可能性がある

仁徳天皇陵など古墳が多数ある堺市

敢えて厳しい言い方をすると、大阪都構想に賛成している周辺市町村の人々は”覚悟”ができているだろうか。

大阪都構想が実現し、大阪市が4つの特別区として再スタートを切った後、次のターゲットになるのは周辺の市町村である。

 

特別区に接する市町村の場合は、分割されずそのまま一つの特別区になるなら、住民投票を実施する必要はない。

つまり、旧大阪市に隣接する市町村が特別区になる場合は、住民投票なく議会の承認のみで特別区になることできる。

市民の合意を得ることなく勝手に特別区化することはないが、特別区への参入を主張する市長が当選した場合は、議会との調整の後、特別区になるだろう。

 

因みに、一つの市町村が2つ以上の特別区に分割される場合は、住民投票を行う必要がある。

堺市の人口は83.93万 (2015年)であり、大阪市内の特別区4区は平均して人口60~70万人(第1区が最少の59万人、第2区が最大の74万人)だから、堺市の場合は丸ごと特別区になるか分割して住民投票が実施されるかどうかは微妙である。

※2019年に当選した永藤現市長は、今の任期中は都構想議論はしないと言っており、堺市で都構想がテーマとなるのは早くても次期市長選がある2023年になる。

 

特別区になったからといって行政サービスが一気に悪くなるわけではないが、周辺の市町村の住民は、都構想実現後は、自分が住む市も特別区になることを自覚しておく必要があるだろう。

因みに私は北摂育ちではあるが、大阪全体のことを考えて特別区化に賛成の立場である。

記事は以上です。

コメント