【大阪都構想】特別区の仕事分担は「中核市+α」レベルかもしれない

政治行政(都構想など)

画像引用元:第9回大都市制度(特別区設置)協議会(大阪府)、事務分担

「特別区(4区)」とは何か?』について書いた前回記事で触れた通り、大阪都構想で設置される特別区は、その仕事内容がかなり幅広いことから”中核市並み”と表現される。

一般に東京の特別区23区は、仕事の数や幅が一般の市レベルに抑えられ、一部業務は東京都が実施するために、住民自治が不十分だといわれる。

 

これまで大阪府と大阪市は同じようなこと(上下水道や図書館、都市開発など)を実施してきたため、仕事内容がかぶってしまい、二重行政や二元行政を生んできたとされる。

筆者の個人的経験だが、大阪には大阪府が建てた中央図書館と大阪市が建てた中央図書館が2つあり、どちらが本当の”中央図書館”か分からなくなったことがあった。

それも二重行政の一つだ。

 

大阪都構想はそのような府と市で被っている仕事を洗い出し、重複しないように再度役割を分担する作業でもある。

今回は、大阪都構想の素案で役割分担がどうなっているか見てみることにする。

 

大阪都構想の原則:住民に身近な行政サービスは出来るだけ特別区が実施する

画像引用元:第9回大都市制度(特別区設置)協議会(大阪府)

大阪都構想では新たに4つの特別区が生まれる。

大阪都構想の大原則は、住民に近い方が良いサービスは住民に近い特別区4区がそれぞれ実施し、大阪全体で行った方が効率や効果の点でメリットが大きいものは大阪府が実施するというものだ。

 

これまでは上で述べたように、大阪府と大阪市の仕事がかぶっていた。上の図で言えば”広域的な事務”の部分である。

 

事務分担の内容

画像引用元:同上(筆者加工)

上の長細い図が大阪府と特別区4区の役割分担表である。

  • 緑線で囲まれたエリア:特別区23区(東京都)
  • 赤線で囲まれたエリア:特別区4区(大阪)
  • 白色のエリア:大阪府

 

「特別区4区の仕事と財源は大阪府に奪われて、権限は一気に後退する!」といった反対派の主張は、間違っていることが分かるだろう。

大阪の特別区4区は濃い青色と薄い青色を合わせた部分(赤線で囲まれたエリア)であり、東京都の特別区23区(濃い青色のエリア)も含んでいる。

★関連:反都構想派の意見を集めて反論してみた

 

都構想推進派は「中核市並み」と主張しているが、図を見ればそれも間違っているかもしれない。

というのも、特別区が行う業務には、中核市以上の政令指定都市や都道府県が行う仕事も含まれており、仕事内容だけ見れば「中核市+α」とも考えられる。

 

例:認定こども園や児童相談所

一般 大阪都構想 東京都
認定こども園の設置 都道府県(大阪府) 特別区 東京都
児童相談所の設置 政令指定都市(大阪市) 特別区 東京都

例えば保育関係でいえば、認定こども園や児童相談所の設置は、大阪府ではなく特別区の担当になっている。

これは東京23区であれば、どちらも東京都が実施している業務である。

 

まあこれは考えれば当たり前の話で、例えば保育所がどれだけ足りていないか、虐待されている子供がどれだけいてどれだけ人員が足りていないかなどは、現場の職員が一番わかっているのだ。

だからその現場に権限と財源を配分し、住民により身近なサービスを体感してもらおうということだ。

 

一方で普通の市町村なら実施できることが、特別区では実施できず、大阪府に移管される業務がいくつかある。

具体的には、消防や救急活動(救急車)、上下水道などである。

これもよく考えれば当たり前の話で、消防や救急は狭い特別区の区割りで分けるより、大阪府全体で運用した方が明らかに効率が良いし、スピードも上がる。

上下水道も同じで、府内の43市町村の水道事業を統合し、その中でも一番コストが安い取水場を使えばその分、水道料金を安くできる。

 

先進的な”大阪モデル”になりえる

画像引用元:同上

仕事内容から考えて、身近に実施すべき仕事か広域で行うべき仕事かを分担するという、当たり前のことを当たり前にやろうとしているのが大阪都構想である。

ただし今回の分担案は、必ずしも今の法律で実施できるものばかりではない。

大阪府で特例条例を制定する必要があったり、国に法令の改正を協議する必要があるものもある。

政府は「必要があれば、法改正など必要な手続きを進める」と言っており(大都市法にもその趣旨の記載がある)、都構想実現後は、大阪府単独で実施できない内容は国の法改正で対応することになるだろう。

 

大阪が輸入予定の都制度であるが、本家の東京都制度をこれでもかというほど改善し、業務分担から見ても別物に近い大阪独自の都制度が出来上がりつつある。

そして、大阪都構想が上手くいけば、都市と都道府県のあり方や基礎自治体と広域自治体のあり方を見直すきっかけになる。

明治維新以降、都道府県が置かれてから、地方自らの意志で都道府県の形を変えたことはない。

地方自らの意志で都道府県制度を変えることになれば、新しい歴史が生まれるだけでなく、その他の都道府県にも大きな影響があるだろう。

 

 

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