【大阪都構想】区長と府知事が話し合う場「都区協議会」とは何か?

政治行政(都構想など)

都区協議会イメージ図(筆者作成)

大阪都構想では、新たにできる特別区4区と大阪府の間に話し合いの場「都区協議会」を設置する予定だ。

東京の都制度においては、法律(地方自治法第282条の2)で話し合いの場を作ることが義務付けられており、これが大阪にも適用される。

 

ただ、東京との内部団体として発展してきた東京23区とは違い、新しく生まれる大阪4区は元々大阪市という別の自治体である。

そのような関係を考慮しつつ、大阪版・都区協議会では特別区の自治を優先する方針を定めた新しい協議制度に仕上がっている。

記事の内容を要約!

・「都区協議会」とは、大阪府と特別区4区が予算配分などについて話し合う会議

・特別区4区が全員参加できるなど、東京に比べて特別区と大阪府の対等さが確保されている。

・その他色々と改善されており、大阪版・都区協議会は東京都のバージョンアップといえる

都区協議会とは

都区協議会イメージ図(筆者作成)

上は大阪版の都区協議会のイメージ図だ。

都区協議会とは、大阪府と特別区4区が予算配分などについて話し合う場である。

 

図にもある通り、特別区の区長4名と大阪府知事1名の合計5名を基本として開催される。

ただ意見が割れたり、専門的な知見が必要な時があることから、数名の有識者を参加させることを想定している。

※有識者を参加させるには施行令の改正が必要。後程詳しく説明する。

 

東京都の都区協議会。東京都側の圧迫感がすごい・・・

因みに東京都制度も大阪と同じく「都区協議会」が設置されている。

ただし大阪と違うのは、区数が23区と大阪の6倍ほどあり、特別区側として会議に出席できる区長は8名だけに限定されている点だ。

また、東京都側からは知事だけでなく、副知事や職員を含め8名が出席する。

東京都の都区協議会では、人数的に見ると一つ一つの特別区は東京都に比べて圧倒的に弱い立場になっている。

 

全ての区長(4区)が参加できる点や大阪府からは知事が1名であること、中立的な意見を述べる有識者を入れている点など、特別区と大阪府の対等さを追求している点では、東京都の都区協議会をバージョンアップさせているといえる。

 

ポイント① 議題は主に特別区と大阪府の予算配分

この協議会では議題は主に3つある。

  • 財政調整に関すること
  • 財産債務に関すること(東京都制度にはない大阪独自の制度)
  • その他

 

一番のメインテーマととなることが予測されるのは、一番上の財政調整であろう。

財政調整制度とはザックリいえば、税収を大阪府と大阪市にどのように分配するか決定する仕組みだ。

現状では9000億円の歳入があったとすれば、大阪府で2000億(約80%)、特別区4区で7000億(約20%)で府と市に分ける仕組みになっている。

ただ、税収は毎年変動するし、必要な費用(例えば社会保障費は毎年増加している)も変動するので、この場で毎年議論を行う。

★関連:大阪都構想の心臓部分である税制「都区財政調整制度」とは

ポイント② 説明責任は大阪府にある

特別区と大阪府間の配分割合が適正であることについて、原則として大阪府側が説明責任を負う

第9回大都市制度(特別区設置)協議会(平成30年4月6日)資料より

強調しておきたいのは、予算の使い道を説明する責任は大阪府にあることだ。

例えば、不況で法人区民税などが税収不足となって、特別区の予算を減らさざるを得なくなった場合、大阪府は4区が納得するような数値を見せ、特別区に減額の理解と承認を得る必要がある。

 

ポイント③ 合意は拘束力がある

2015年の住民投票で大阪都構想が否決された後、話し合いで二重行政を解決しようということで、大阪戦略調整会議(通称”大阪会議”)が開かれた。

だが、初会合から議論は紛糾し、結局何も決まらなかった。

その一因は法的拘束力がないことだ。拘束力がない状況では、互いに言いたいことを言ってオシマイである。何も進まないのは当たり前だ。

 

一方、こちらの都区協議会は地方自治法第282条の2で定まっているように(都と特別区の事務の処理について、都と特別区及び特別区相互の間の連絡調整を図る)、都制度を形作る制度の一つだ。

その意味でこの協議の場で決まったことには、一部不満があったとしても、順守しなければいけない。

 

因みに、この場で決まらない場合は第三者機関で協議され、調停案を作って再度協議し、それでもだめなら自治紛争処理の手続きに入る。

どうしても上手くいなかった時に備えて調停のプロセスを準備している。

 

都構想実現後に法改正が必要

今の都区制度は東京以外の地域で運用された経験がなく、その他の地域で適用される前提で作られていない。

だから大阪都構想が住民投票で過半数を得たとすれば、細かな法律を変更する必要が出てくる。

例えば都区協議会では有識者が参加することになっているが、これも現行法では難しく、地方自治法の施行令(細かな法律)を改正する必要がある。

 

「都構想実現後に法改正するの?」と不安になるかもしれないが、その点は問題ない。

まず大阪都構想を可能にする法律である「大都市法」の第9条6項に「特別区設置協定書の内容を踏まえて新たな措置を講ずる必要があると認めるときは、当該申請があった日から六月を目途に必要な法制上の措置その他の措置を講ずるものとする。」とある。

つまり、「住民投票で決まった大阪の民意を尊重し、6か月以内を目安に、実現に必要な法改正を行うべし」という旨の内容が書かれている。

 

だから住民投票で大阪都構想に賛成となれば、数か月以内に国は必要な法改正を行い、大阪都構想は実現するだろう。

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