大阪都構想が住民投票で賛成可決となれば、その3~4年後に大阪市は特別区4区に再編され、新しい大阪府が生まれる。
これまで大阪市は住民に身近な仕事と鉄道整備などの広域行政を行っていたが、特別区になると広域行政は行わなくなる。
そのため、例えば港の所有権など、一部の財産を大阪府に譲り渡す必要がある。反対派は「大阪府が大阪市の財産を不当に吸い取ろうとしている」と主張しているが、実際どうなのだろうか?
大阪都構想の修正案(平成30年4月6日)から具体的に見ていこうと思う。
大阪市は10兆円の財産を持ち、3兆円の負債を抱えている
ザックリ書けば、現時点で大阪市は約10.8兆円という莫大な財産を抱え、一方、3.3兆円の負債(借金)を背負っている。
大阪市の資産の内訳は、市有地(市が保有している土地)や市庁舎などの建物、大阪メトロ・大阪シティバスの株式などが挙げられる。それらをすべてかき集めると、推定で10兆円を超える。
負債の内訳は、大半が地方債(大阪市債)である。
試算10兆円は、特別区4区に7兆円、大阪府に3兆円が分配される
引用元:第9回大都市制度(特別区設置)協議会(平成30年4月6日)
資産を振り分ける際の基本的ルールは、住民に身近なサービスに必要な財産は特別区に振り分け、大阪全体の広域行政を行うために必須の財産は大阪府に移管することだ。
また、特別区で一体的に運用する必要があるものに関しては、特別区の一組織である一部事務組合に移管する財産もある。これは特別区に移管されるものに等しいと考えてよいだろう。
例:大阪市の市有地・区役所の建物
今後特別区4区が利用していく土地・建物であり、これはそれぞれの特別区が引き継ぐ。
例:水道事業、港湾事業、大阪市立大学
大阪市が特別区4区に再編されると、水道事業は大阪府が大阪全体で行うようになる。こちらの方がスケールメリットが働き、効率が良い。
また、港湾は大阪の都市戦略に関わる拠点であり、大阪全体という観点から大阪府に移管される。
大阪市立大学も大阪府に移管され、今後は府大と経営統合され、新しい大阪都立大学として生まれ変わるだろう。因みに新キャンパスは森ノ宮で、スマートシティ研究の拠点になるといわれる。
例:市債
大阪市債(約3兆円)は何と、全て大阪府に移管される。
「大阪府がなぜそんな額を負担せねばならんのだ」という批判が来そうだが、実際はそうではない。大阪府が一旦市債を引き継ぎ、特別区4区から得る税収などを元手に返済を行う。
実質返済しているのは特別区民であり、大阪市の借金を大阪市が返済しているという点で、まあ特に疑問はない。
因みに大阪市債を特別区4区それぞれに継承したい場合、一度、市場から大阪市債を回収し、特別区債に変更(分割)する必要が出てくるが、これはほぼ不可能だ。
そのような制度上の背景もあり、大阪市債は大阪府が一括で引き受け、区税などを原資に返済するスキームを取ることになった。
今後必要があれば追記する。
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