『うめきた2期』が持つ圧倒的なポテンシャルとは

経済

阪急中津駅側から撮影したうめきたとグランフロント大阪の夜景

梅田に遊びに来た人は、駅の北側にある広大な空き地に少し驚くかもしれない。

都心の一等地の一等地であるにもかかわらず、雑草が生えた空き地になっている。

そう、この梅田の北にある広大な空き地エリアが通称”うめきた”と呼ばれるエリアである。

 

うめきたは2013年に第一期としてグランフロント大阪が先行開業し、大阪駅周辺の人の流れを一気に変えた。

2013年の開業以来、一時は減少したものの、来館者数は増加を続けている(2018年は年間約5500万人来場)。

そしてうめきた開発の目玉は、その横で工事が進められている第二期のうめきた開発である。

カジノIRの整備方針延期の事実から分かる商都・大阪の致命的弱点

大阪市視点で見れば、地下鉄を市外に延伸しないのはごく当然だ

「本当の」「比類なき魅力を備えた」”みどり”を作る

引用元:大阪市におけるイノベーションを促進するまちづくり(大阪市資料)

うめきた第2期のコンセプトで面白いのは、都心のど真ん中の一等地に「みどり」、つまり森(都市公園)を作る点だ。

都心に桜やケヤキなどの街路樹を植え、道路を整備する緑化であれば全国各地で見られるが、うめきたはそのような”街路樹”とは似て非なるものだ。

 

うめきたは「森」なのだ。

府市の資料の表現を一部利用するなら、「本当のみどり」「比類なき魅力を備えたみどり」である。

よく例に挙げられるのがNY(ニューヨーク)のセントラルパークであり、あれは整備された自然ではなく、本当の森である。

うめきたで想定されているのは、こまごま剪定をして管理せずとも勝手に木々が育ち、数十年という単位で成長していく森である。

 

地方都市にありがちな中途半端で小ぎれいな「みどり」になってしまえば、維持管理するための管理費がかさむだけでなく、ありふれた金太郎飴で人工的な自然になってしまう。

うめきたを特徴づける生命線といってもいいのがこのコンセプトであり、これから当サイトでも協力していきたいと思っている。

※今後、当サイトの収益の一部をうめきたプロジェクトに寄付する予定です。特設ページを作ります。

 

採算性と独創性(みどり)を両立する難易度の高さ

日本の都市、特に政令市を含む普通の地方都市はどこも同じような風景だ。

ターミナル駅を降りればJRが開発する駅ビルがあり、その周辺にはオフィスが入居する高層ビル、さらに駅から南北に続くケヤキ並木が見える・・・

 

読者の皆さんも頭の中でどこと言わずとも情景が思い浮かぶと思う。

どの駅前も同じ光景なのだ。

 

一般に、ターミナル駅周辺はその都道府県で一番地価が高く、企業にとっても自治体にとっても一番”儲かる”場所である。

だから地元の自治体は収益性の高い高層ビルを建て欲しいし、企業としても儲かるビルを建てたい。

そのような経済的合理性を追求した結果、どの街も駅前には高層ビルと商業施設を作り、同じような光景が広がるようになった。もちろん街を訪れた人も面白みを感じられない。

 

普通に考えれば、うめきた2期のような梅田駅すぐの空き地に緑地を作るという狂った発想は出てこない。

もともとうめきた2期は、橋下徹氏が市長になるまで、他の地方都市と同様、ビル群を建設する予定だった。その後の平松市長はスタジアムを建設する方針だったらしい。

ビル群を建設するのは、収益性の観点からはごくごく当然の話だ。

 

だが2011年に大阪市長に就任した橋下徹氏はそれらの方針を撤回、駅前に緑の森を作る方針を打ち立てた。

ただ、ビルから緑地公園まですべてを民間事業者に開発させようとすれば、収益性が悪い「みどり」を嫌がって、開発しようとするディベロッパーが現れなくなる。

 

引用元:うめきた(大阪駅北地区)プロジェクト(大阪市HP)

そこで取られた開発手法が面白い。「地上のまとまったみどり」(≒緑地エリア約4ha)は大阪府と大阪市が管理する方針を取ったのだ。

金がかかるのに直接的な収益を生まない緑地は、民間に任せるより、損得勘定に縛られない府市が管理運営した方が長期的に管理できるという考えからだ。

 

なお、みどりを作ることは府市にとっては短期的には損であっても、長期的に考えれば余りあるメリットがある。

たしかに、短期的には税収を得るどころか月々の管理費を支払わねばならない土地にはなるが、長期的には梅田周辺の開発が進み、イノベーションが多数生まれ、大阪の世界的な競争力が強化される。

そしてその国際的プレゼンスの向上が、順繰りめぐって府市の税収アップにつながるだろう。

だから府市の税金という観点でも、短期的な利益は”我慢”しなければならないのだ。

 

うめきたに呼応して周辺開発が進む。第3,4期も期待できる

グランフロントより撮影。スカイビル右側のエリアや中津駅周辺はポテンシャルが高いだろう

うめきたの開発コンセプトでもう一つ面白いのは、開発する全地区(24ha)ですべてを賄おうとしないことだ。

うめきたエリアはあくまで次世代梅田を創造する核という位置づけであり、それに呼応して周辺地域の開発が進むことを狙っている。

 

今、うめきた2期の北側(スカイビルと阪急中津駅の間)を歩いてみてほしい。古い雑居ビルや運送業者の拠点ばかりで、一等地として勿体ないと言わざるを得ない使い方をされている。

現在JRの貨物線が通っていてアクセスが悪く、分断されていることが大きく影響している。

しかし巨大なうめきたの森ができれば大阪・梅田駅からのアクセスは一気に改善され、地価が急上昇し、それらの地域もホテルやビル、商業施設に建て替えられるようになるだろう。

 

つまり、うめきたの開発は正式には第2期で終わるが、今後、周辺部ではうめきたのポテンシャルに期待する民間企業によって、第3、4、5期の開発が進められていくだろう。

うめきたというモンスターが本格的に猛威を振るい始めるのは、街びらきが終わってからなのだ。

 

「周辺部の開発も進めよう」というコンセプトを説明するのはあまりに簡単だが、民間に運営させれば税収が湯水のように湧いてくる都心の一等地を自治体が税金を負担しつつ整備することは、資金面や利害関係の調整が大変難しい。

特に自治体にとっては痛みが大きい。

ここまでまとめ上げてきた民間業者や大阪府市はよく頑張ったと思う。

 

イノベーションを生む仕組み

こちらは今後加筆しようと思うので、触れるだけにする。

関西は医療分野が世界的に強く、中之島など都心エリアは税制が優遇される特区に指定されている。

 

大阪府市が提出する資料にもある通り、主に医療分野の企業やスタートアップと協力し、イノベーションの拠点とするようだ。

ただうめきたエリアはあくまでイノベーションのプラットフォーム(場所)になるだけであり、何が生まれるかはまだ誰も分からない。

具体的なイノベーションやビジネスが生まれるのはこれからだろう。

 

関空や新大阪、中之島へのアクセスアップ

もうこのエリアのポテンシャルや面白さは言うまでもないが、これからさらにアクセスが良くなる。

 

まずは2023年にうめきたの地価に新駅が完成する予定で、これにより関空特急のはるか停車するようになって、関空への鉄道アクセスが向上する。

また、2030年後半になにわ筋線が開通すれば、今後国際的な医療拠点として飛躍する可能性がある中之島エリアと電車で一本で行けるようになり、各地とのアクセスが大幅に向上する。

関連:なにわ筋線開業(2031年)で、中之島のポテンシャルは開花するだろう

 

うめきたエリアはポテンシャルの塊といってもいいほど、将来性のあるエリアなのだ。

万博前年の2024年には先行して街びらきがされるそうだ。ますます今後のうめきた・大阪には目が離せなくなる。

 

【追記】夜時間があるときにうめきたエリアを歩いて撮影した写真。期待している人は多いんでしょうね。

カジノIRの整備方針延期の事実から分かる商都・大阪の致命的弱点

大阪市視点で見れば、地下鉄を市外に延伸しないのはごく当然だ

※今後さらに内容を加筆予定です。

コメント