世界遺産に登録された百舌鳥・古市古墳群。これからどうする?

政治行政(都構想など)

 

2019年の7月に大阪初の世界遺産(世界文化遺産)として、百舌鳥・古市古墳群が登録された。

正式名称は「百舌鳥・古市古墳群 -古代日本の墳墓群-」というそうだ。

 

在阪メディアを中心とする大阪では、数日はこの話題で持ちきりとなった。

筆者も以前から堺の方に大きな古墳群があることは知っていたが、世界遺産の登録運動までされていたとは知らなかった。

せっかくなのでこの機会に行ってみた人もいるだろう。私も休日の土曜日に行ってみることにした。

 

メインで訪れたのは、百舌鳥・古市古墳群の中でも百舌鳥古墳群にあたる上の「仁徳天皇陵古墳」だ。

古墳は周辺で数十基あり(登録対象は49基)、仁徳天皇陵がその中でも最大である。

この記事では実際に訪れて思った感想と課題を述べていくことにする。

 

まだ観光地としてアピールできる状況にはない

古墳の形をした花壇(駐車場近くにある)

観光地にすべきかどうかという議論は後にするとして、感じたことをまとめるなら、世界遺産登録から日が浅くまだまだ観光地としての対応が追い付いていない。

指摘すべき点は数多くあるが、ザックリまとめると以下の通りになる。

 

① ほとんど入れない

ほぼ立入禁止となっている

日本最大の古墳である仁徳天皇陵は天皇のお墓ということもあって(本当かどうかは諸説ある)、容易に立ち入ることはできない。

古墳は周辺の森と濠、古墳本体から成り立っており、例えば橋のような古墳に近づける設備もない。

 

仁徳天皇百舌鳥耳原中陵 拝所

唯一近づけるのが正面の鳥居がある「仁徳天皇百舌鳥耳原中陵 拝所(上の写真)」であるが、こちらも門が閉まっていて、鳥居にすら近づくことはできない。

実際私の周囲にいた観光客たちは「訪れる場所がなかった」「見ることろがなかった」「中に入れない」等の辛辣な意見を口にしていた。

 

古墳の敷地の管理権(=敷地をどのように管理するか決定する権利)は宮内庁にある。

堺市や大阪府の権限だけではどうすることもできず、今後の対応は宮内庁と連携していく必要があるだろう。

 

② 具体的に形が分からない

南側から見た濠の様子

古墳群は基本的に地上からしか見ることができず、その形状が分からない。

筆者は古墳を半周したので、その大きさは理解することができた。しかし、前方後円墳特有のかぎ型の構造を目で見て確かめることはできなかった。

その形状を体感するためには高所から眺めなければならず、そのような施設(展望台など)が現在の仁徳天皇陵付近には存在しない。

 

なお、古墳全体を回ることができる周遊路は一周約2,750メートルで、かなり距離がある。

夏場は熱中症に気を付けて下さい。

 

③ 草がボーボー

うっそうと生え茂っている雑草たち

これまでは世界遺産”候補”止まりだったこともあり、管理はされていだだろうが、世界遺産レベルの厳格な管理ではなかった。

訪問したのが夏場だったこともあり、半周してみて目にしたのは雑草のパラダイスだった。

古墳は一周3キロ弱あって、雑草の草刈りなどすべてを完璧に管理するのは難しいが、これでは近所の空き地だと感じるシーンも時々あった。

 

また、仁徳陵の北側部分では植物性のゴミ(枯れ葉か花びらか何かだった)が集まっており、見栄えが良いとは言えない光景だった。

周辺を含めて今後どのレベルまで管理をするのか、清掃に必要な予算とも相談しながら、決めていく必要が出てくるだろう。

 

大仙古墳の周辺は閑静な住宅街が広がっている

上の写真のように、古墳周辺を一歩逸れると、場所によってはすぐに住宅地が広がっている。実際、この道は周遊路の一部だ。

 

世界遺産であるなら、観光地化をしたいかどうかにかかわらず、日本各地や世界各地から観光客がやって来るだろう。

また、大阪市内の観光客を呼び込みたい堺市としても、百舌鳥古墳群を活用した観光地開発はほぼ既定路線に近い。

 

現状を考えれば住宅地を守ろうとする一点張りではなく、逆に住民を置き去りにした観光政策でもなく、観光公害と地元民の住環境を両立させることが大切になるだろう。

筆者の意見ではあるが、周辺住民の生活は保護しつつ、大切な世界遺産に選ばれたのだから、それを活用していくことも重要だと思う。

 

古墳は本来、内外から大阪にやって来る人々に自分の国の強さや偉大さを見せつけるために作られたものだ。

数多くの人に参拝して貰い、その大きさを体感し楽しんでもらえる方が、古墳が建造された本来の目的に適っているといえるのではないだろうか?

 

現在、堺市長の永藤市長はヘリウムガスを使った気球を2020年4月に運行することを予定しているとニュースで知った。

熱気球の危険性を考慮し、より安全なヘリウム気球を使うそうだ。

幸い古墳の横には大仙公園という緑豊かで広い公園があるので、こちらを離発着場にできそうだ。

 

百舌鳥古墳群については地域の住民の声を聞きながら、堺の魅力を高められるような市政を行ってほしい。

以上です。

コメント

  1. 河内王朝 より:

    気球で見ても「ほぼ森」なので観光地化は難しい気がします。まあ僕は好きですけどねあの森が。

    一つ可能性があるとすれば、神戸や群馬や、大阪でも八尾には、当時の姿を復元して観光客に見せる古墳があります。やはり当時の目的も見せる為ですから、見せる為には森ではなく当時の姿が最適。仁徳陵は難しいとは思いますが、あの辺りには天皇陵だけでなく倍塚含め沢山古墳があるので、近くにある古墳を一つ復元化すると当時を想起出来て良いのでは。